FXを始めるにあたって、「どの通貨ペアを選択するか」は重要な問題です。自分のトレードスタイル、ライフスタイル、用意できる資金に合わせて、ベストな通貨ペアを選択したいものですよね。
FXの投資対象となる通貨は20種類ほどあります。
中でも代表的な通貨は、「米ドル」、「ユーロ」、「円」、「英ポンド」の4つです。
有名なのは「英ポンド」か「ユーロ」かな?
では手始めに、各通貨の特徴を見ていきましょうか
4つの通貨の特徴
各通貨にはそれぞれ特徴があります。
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米ドル
- 世界の基軸通貨。安定した通貨の価値を持つ。「有事のドル買い」という言葉があるほど、マーケットの信頼が厚い通貨。日本で情報を得やすいのもメリット。
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ユーロ
- 米ドルに対抗して、ヨーロッパで誕生したEU加盟国の通貨。ひとつの加盟国の経済状況が、他の加盟国に影響し、ユーロの値動きが上下することがある。
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円
- 米ドル、ユーロに次ぐ取引量があり、世界三大通貨の一つとされる。
最近のFX相場では、金融不安などで市場の先行きが不透明になると、円が買われる傾向にある。
- 米ドル、ユーロに次ぐ取引量があり、世界三大通貨の一つとされる。
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英ポンド
- イギリスの通貨。イギリスのEUからの離脱(ブレグジット)が発表され、今注目を集めている。
- 短期で相場が激しく上下するなど、「初心者には難しい通貨」と言われるものの、まとまった利益が得られる可能性もあり、人気のある通貨。
FXにおいて、初心者が取り扱いやすいのは、情報を得やすく、なじみのある通貨です。中でも「米ドル/円」は値動きが穏やかで、初心者がもっとも取り扱いやすい通貨ペアといえます。
英ポンドは「殺人通貨」
一方、「英ポンド/円」は値動きが激しく「殺人通貨」と呼ばれることもあります。
FX初心者からしてみれば、そのような通貨は怖くて取引できない、と思うかもしれません。しかし、意外に思われるかもしれませんが、この「値動きの激しさ」が、多くのFXトレーダーから好まれている特徴のひとつであることも確かです。
値動きが激しいということは、それだけ利益を出すチャンスも多いということです。
この記事では、FXにおける「英ポンド」通貨の特徴と、取引のポイントについて見ていきましょう。
英ポンドとロンドン市場について
第二次世界大戦前までは、「英ポンド」が世界の基軸通貨でした。
現在では、「米ドル」が世界の基軸通貨としての影響力が大きく、またヨーロッパでは「ユーロ」の統一通貨が使われているため、「英ポンド」はイギリスの自国通貨という位置づけです。
しかし「英ポンド」は、「米ドル」、「ユーロ」、「円」に次いで世界で4番目に取引量の多い通貨です。
また、イギリスのロンドン市場は、ニューヨーク市場・東京市場とともに「世界三大為替市場」と呼ばれています。
日本時間でのロンドン市場の取引時間
- 16:00~01:00
- 16:00~0:00(夏時間)
- 17:00~01:00(冬時間)
ロンドン市場は、日本時間の16:00~01:00(夏時間は16:00~0:00、冬時間は17:00~01:00)に取引が行われています。
日中の東京市場を中心としたアジア圏のマーケットは、比較的穏やかな値動きです。ここから時間が進み、取引量の多い欧州のマーケットが始まる日本時間の夕方になると、為替市場の値動きは大きく変化していきます。
そしてニューヨーク市場が始まって、ロンドン市場と取引時間が重なる日本時間の深夜には、値動きは1日のなかで最も激しくなります。
FXの世界では、ロンドン時間とニューヨーク時間を意識することが重要です。
「英ポンド/ 円」の相場の動き
「英ポンド/円」の通貨ペアは、自分の予想していた方向に相場が動けば、相当の利益をあげることがでます。しかし予想に反した動きになった場合、今までの利益を帳消しにしたり、それ以上の損失を出すリスクがあるといえます。
通貨の流通自体は世界第4位ですが、米ドル・ユーロと比べると取引量には大きく差があります。取引自体もイギリス国内が主な市場です。イギリス国内の個人投資家の状況によって、さまざまな値動きを見せる通貨です。
「英ポンド/円」は1日で1~2円動くことも珍しくありません。1日に3円ほど動くこともあります。
「米ドル」で1日に3円動いたら驚いてしまいますが、「英ポンド」では結構このようなことがあります。そのため、「英ポンド」はいつポジションを持っても、相場の変動に注意しなければなりません。
また、大きな社会的イベントが起きた時、より為替が激しく動きます。
2016年6月には、国民投票によりイギリスのユーロ圏離脱が決定しました。いわゆる「ブレグジット」です。この決定により、ポンド相場は急落、1日で30円近く値を下げました。
離脱決定後、ポンド相場はこの「離脱交渉の進展」のニュースに翻弄されています。ニュースが出るたびに値動きは激しく変動するので、十分な警戒が必要です。
英ポンドの値動きが激しいのはなぜ?
英ポンドの値動きが激しい理由
- キャリートレードに使われることが多く投機筋に人気
- 経済指標の結果に左右されて相場が大きく変動
- 英ポンドは原油価格にも影響を受ける
「英ポンド」の金利は他の通貨と比べると比較的高いので、キャリートレードに使われることが多く、投機筋に人気があります。「円」などの低金利通貨をもとに「英ポンド」を買うと、その金利差を利益として得ることができるのです。
この「投機筋に人気」であることと、「米ドルやユーロと比べると取引量が少ない」ことで、狙ったかのような売買が行われると、相場が大きく動くことがあります。
投機筋はキャリートレードを行う傾向にあるため、イギリスの経済状況によって資金を動かそうとします。イギリスでは各経済指標の発表が、日本時間の夕方ごろ(夏時間は17:00~17:30頃、冬時間は18:00~18:30頃)に行われます。
「英ポンド」はこの経済指標の結果に左右されて相場が大きく変動することがあります。この時間帯には、価格の変動幅が大きくなると覚えておくとよいでしょう。中でも「英中央銀行の政策金利」は、「英ポンド」の値動きに大きな影響を与える、重要度の高い経済指標です。
毎月上旬の木曜日、21:00に発表されます。2019年2月時点では、政策金利は0.75%です。
また、「英ポンド」は原油価格にも影響を受けます。
なぜかというと、イギリスが石油の隠れた資源国だからです。北海油田を抱えたイギリスにとって、石油製品は主要な輸出製品です。そのため、原油価格がイギリス経済に与える影響は小さくありません。原油価格に連動する形でポンドの値が動くことがあります。
「英ポンド」取引のメリット
英ポンドのメリット
- ハイリターンを期待できる
- 短期取引に向いている
「英ポンド」取引のメリットは、とにかく「ハイリターンを期待できる」ことに尽きます。
ボラティリティ(=価格変動率)の高い通貨なので、デイトレードなどの短期取引に向いています。ボラティリティが高いということは、ハイリスク・ハイリターンな通貨であるといえます。ですから、ある程度相場を読めるようになるまでは、ポンドには触れないのが得策かもしれません。
一方、FX取引の経験を積み、「どんな時にどんな値動きをするか、だいたい掴めてきた」という方にとっては、非常にチャンスのある通貨です。
また、おおまかな値動きは地理的にも近い「ユーロ」と似た動きをする傾向にあります。ただし、「英ポンド」独自の値動きがないわけではありません。
「英ポンド」を取引する際は、特に次のような経済指標に着目するとよいでしょう。
(★の数は重要度の目安)
指標 | 重要度 |
英中央銀行の政策金利 | ★★★ |
製造業生産高 | ★★ |
住宅価格指数 | ★★ |
失業率 | ★★ |
「英ポンド」取引のデメリット
英ポンドのデメリット
- リスクが大きい
- スプレッドが「米ドル/円」と比較して高め
- 証券会社・銀行を狙ったテロが起こる可能性
いちばんのデメリットは、「リスクが大きい」ということです。
予想に反した方向に相場が動いた場合、大きな損失を被る可能性があります。
そのため、相場観がまだ育っていないというFX初心者の方には、あまりおすすめできない通貨です。
そして「英ポンド/円」のスプレッド(=手数料)は、「米ドル/円」などよりも、比較的高いです。「英ポンド」の取引が短期決済が多いことを考えると、手数料を上回る利益をださなければ、資産を増やすことはできません。
また、イギリスは「金融国家」であるため、大きな証券会社・銀行やロンドン市場があります。それらを狙ったテロが起こる可能性があることも、リスクとして頭に入れておきましょう。このようなテロが発生した場合、「英ポンド」は下落します。
「英ポンド」今後の見通し
ここまで、ポンドの大まかな特徴をみてきました。
そして2019年2月現在、イギリスはEU離脱問題、いわゆるブレグジット問題で揺れています。「合意なき離脱」が現実味を帯びてきた今、今後のイギリスの動向を予想するのはとても難しいです。
今までの「英ポンド」の値動きをおおまかに振り返ると、以下のようになります。
2016年6月 | 国民投票によりイギリスのユーロ圏離脱が決定する。 |
2018年8月2日 | 英国中央銀行(BOE)が利上げを実施、EU離脱交渉をリスクとして挙げる。 |
_ | 市場では「合意なきEU離脱」のリスクが高まったとして、ポンド安が続き、対米ドル、対円でそれぞれ年初来安値を更新した。 |
_ | その後、EU離脱交渉を示唆する報道が相次ぎ、ポンドは反発した。 |
9月 | EU首脳会合で離脱協定の合意が先送りされ、「英ポンド」の相場は緩やかに下がっていった。 |
10月 | EU首脳会合でも合意は再び先送りされ、交渉期限が12月に延期される。 → 「合意なき離脱」の可能性が高まったとしてポンドは下落した。 |
12月 | 与党保守党でメイ首相への不信任投票が実施された。信任されたものの、大量の造反票が出たため、「合意なき離脱」が近づいたとして、対円では2019年初めに一時131円台に急落した。 |
2019年1月 |
政府が議会に代替案として「アイルランドの国境問題の対応策」を修正する方針を提示した。 「合意なき離脱反対派」や「EU残留派」の議員が多数を占める議会では、合意なき離脱回避や延期を求める動きが活発になっている。 そのためポンドは反発していて、1月25日現在、対米ドルで同1.31米ドル台前半、対円で同144円台前半で推移している。 |
そしてブレグジット期限が3月29日に迫る中、いまだにブレグジットの条件や決定が定まっていない状況です。
BBCニュースが想定する、今後あり得る6つのシナリオを紹介します。
【再交渉された離脱協定、あるいは現状の離脱協定の再採決】
- 合意なしブレグジット
- 新たな離脱協定の策定
- 2度目の国民投票
- 早期総選挙
- 新たな内閣不信任案の提出
(引用:BBCオンライン)
まとめ
このようにブレグジットに関する問題は、不確実な事柄が多く、長期的な見通しを立てるのは容易ではありません。
特に「英ポンド」を絡めた通貨ペアでトレードされる場合は、今後のブレグジットの動向を注視するようにしましょう。
FX取引としては比較的難易度の高い「英ポンド」ですが、ハイリターンを狙えるという魅力があるのも事実です。もし「英ポンド」に興味を持たれたら、その特徴を理解し、適切なリスク管理も行いながら、資産運用に活かしてみてくださいね。